研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2012年9月20日木曜日

専用ハーネスがない後付け電装用品は取り付けないほうが懸命だ

取り付けるべきではない、と断言したくなるトラブルも出ている。それは、配線ミスによるクルマの火災だ


火災にはならなかったが、自身にも経験がある、それは、ある用品開発メーカーから「空燃比計を取り付けてあげますので、会社までクルマを持ってきてください」「A/Fセンサーとの調整も必要ですから4~5日預かります」と言うので持参、出来上がりを待つ。

期限通りに空燃比計が取り付いて、如何に燃料が無駄に消費されているか理解できたまではよかったが、その年の夏、夕方、スモールライトを点灯させようとスイッチをひねった瞬間、変な音がしてイルミネーションとテールやスモールライトが消えた。

他人が電装用品の取り付けをやって、それが原因であるかどうか分からないトラブルを解決させる。これはかなり大変で、時間がかかるだろうと予測。イルミネーション関係のフューズが切れるのが、取り付けた用品が原因であるのか、別の原因なのか分からないからだ。

取り付けた用品にミスがあるかもしれない、と言う判断の元に、ダッシューボード周りを取り外していくと、ありました原因が、イルミネーションとしての電源を取る追加の配線が、ダッシューボードとボディの間に挟まれ、数ヶ月たったその年の夏、暖められた配線ビニールの被覆が切れ、ボディと接触、ショートしたのだ。

この電装用品にはもちろん専用ハーネスとしてはあるが、それでも取り付け方や配線のやり方によってトラブルが起きると言うこと。電気の取り方が間違っていれば、フューズが飛ばずにコードが燃え、火災に発展する。クルマの火災は(特に電気の場合)まず消火するのは難しい。

電装用品にもいろいろあるが、単純なアナログ電流計や電圧計などであるなら、配線ミスでのトラブルは少ないだろうし、専用ハーネスなどと言うものもないので、これらの用品は除外してもいいだろうが、どちらにしても注意は必要である。

また、中古品やオークションで競り落としたとき、専用ハーネスが付属していない場合に問題となるのだが、カーショップで販売されている中にも、この専用ハーネス(車種別と言うことだけではない)を付属させていないものもあるようで、その場合には、適当なものを使い、指示通りに接続配線(ハーネス)を、自分で造るよう指示されている。このような場合、これを見よう見まねで配線する、ということはリスクが大きいし、最近のクルマでは別のトラブル(キャン通信を使った電気系統が正常でなくなる)も出てくる。

他社製品のハーネスを利用する、なんていう、とんでもない情報も出ているようだが、これは絶対にダメ。途中で設計変更されていることだってあるわけで、それが伝わっていなければ、当然トラブルが引き起こされる。

クルマの火災を招きたくないなら、多少高価でもしっかりと部品・用品が揃った確実なものを選ぶべきだ。

2012年9月11日火曜日

ポイント式点火装置を勉強するためのデモ機を作る②

どのように造っていくか、完成予想を頭に入れながら現物合わせとする

 

ディストリビューターと駆動用のモーターをどのように配置するかは重要なこと。それは、モーターからの回転駆動を、プーリーで取り出すか、ダイレクトに何かで繋げるかということ。

装置を造る前にディストリビューターを分解して、作動の点検を行う。なお、ポイントの接点は点検も磨きもしない。それをやるのは実験の最後だ

ディストリビューターの横にモーターを持ってくれば、確かにコンパクトにまとめられそうだが、駆動方法が難しそうで、セルモーターに装備しているスプロケットを使うにしても、同様なものを手に入れて、それをディストリビューターのシャフトに取り付けるのが大変そう。

そこで、直列配置を考えてみた。セルモーターの駆動シャフトとディストリビューターのシャフトは同じぐらいの太さ。その間をフレキシブルジョイントで繋げばいい。

何がジョイントとして向いているのか、考えた結果、エアコンプレッサーのホースを使うことにした。無理やり押し込める太さなので、スリップせず都合がいい。ディストリビューター側のシャフトは研磨されているので、回転砥石で縦方向の擦り傷を作ることで対策。

ガレージの中を散らかし放題で作業。西日が当たるようになると室温が高くなるので注意。2日間、延べ4時間ほどの作業を行った

ベースのフレームは、ホームセンターで購入しておいた木の板。適当な長さに切り、左右を繋いで幅を2倍にする。そこに、まずディストリビューターを直角に取り付ける。

木の板にはホールソー(20mm)を使ってディストリビューター・ハウジングが通る穴を開ける。その板をベースにしっかりと取り付けて、ディストリビューターをセットし、固定すると確実に取り付けが終了。

駆動用のモーターは、当初アルミ板を使ってブラケットを造ろうと思ったが、取り付け剛性のことを考えると、やはり木の板が有利であるとの判断から、トレースゲージを使ってモーターの逃げを写し取り、その部分をカットしてから、高さをあわせ、これもベースに取り付けて、モーターを固定。もちろんその前に、ジョイントとなるホースは押し込んでおく。

取り付けが出来たところで、バッテリーから電気を取り回してみる。振れもなく、調子よく回るので、とりあえず安心。後は電源をどうするかであるが、前回書いたNゲージ用に自作したパワーパックは、容量が10Aあるものの、そのほかのコードや可変抵抗器の容量が不足しているので、バッテリーから直に取ることにした。

駆動用モーターの電源は、当初、数十年前に息子が集めたNゲージ用に自作したパワーパック(100Vから12Vにするトランス、整流用のダイオード・共に容量は10A、などの他、可変抵抗器)を使用する予定だったが、可変抵抗器と内部の配線が細いので、これの使用をしないことにする

バッテリーと可変抵抗の容量が大きなものを探した。抵抗は20Ωなので少し大きすぎるが、微妙な回転調整は必要ないので、これでやれそうだ

木の板でベースを作り、モーターとディストリビューターを直列で取り付ける。ジョイントはエア用のホース。試しに回してみたが、バランスよく出来たことを確認した

2012年9月3日月曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス重要度を勉強する

そのため、ポイント式点火装置のデモ機を作る①


クラシックカーやクラシックバイクでもなければ、今の点火装置にポイントは使われていない。回転信号とエンジンの負荷を検出し、ベストな(燃費・排ガスなどを)燃焼をさせるプログラムをECUに組み込んでおり、そこから信号を取って、点火のタイミングとしているからだ。

数十年前なら、永井電子(ウルトラ)には当時発売されたばかりの、電子式エンジン回転計のデモ用として、ポイント式の点火装置と電源部(回転を可変させる必要もある)、回転計をセットにしたものを、販売店などに貸し付けていたのだが、今となってはそのデモ機もない。なければ造る、これしかない。

とはいっても、ポイント式の点火装置など、ましてディストリビューターとのセットとなると、持ち合わせがない。知り合いのポンコツ屋さんを当てにするしかないのだ。

電話をしてみると、「昨日550ccの軽トラックをバラシタので、あれはたぶんポイント式、だけど3気筒だよ」というのだが、もちろん4気筒でなければならないことはない。ディストリビューター(デモ機を作る上での構造的なものが必要)とポイントならそれでいいのだ。

早速出かけてみると、ありましたポイント式のディスビが。イグニッションコイルは手元にある。ディスビを回すモーターは、これも手元にあるスーパーカブ用のセルモーターが使えそう。回転可変装置は可変抵抗器を使うか、容量が合えば自作したNゲージ用のパワーパック。それと、容量の大きなバッテリーを組み合わせれば、何とかなるのではないかと思う。
以下次号

ポンコツ屋さんからいただいてきたポイント式のディストリビューター。軽トラック用で3気筒だというが、贅沢は言っていられない。これを回せばとりあえず何とかなる

ディストリビューターを回すモーターは、ある程度トルクがあって、回転数も高くないといけない。当初は、ラジエターの電動ファンも考えたが、自宅にあったスーパーカブ用のセルモーターを使ってみることにした


点火コイルは、数年前、永井電子から頂戴してきた丸型のものを使う。これらをセットし、電源部を調達すれば、デモ機が出来そうだ

2012年7月20日金曜日

オレのと違うな~実験結果が

自動車火災の発生が多いことを踏まえて、国土交通省は「適正な交換が必要で、それを守らないとエンジントラブルから、火災に繋がる」と発表した。

確かに適切なエンジンオイルの交換は重要なことであるし、オイルレベルについても定期的に調べておくことも必要だ。

原因は、「エンジンオイルが入っていても、ストレーナーなどが詰まり、潤滑不足から焼きつき、シリンダーブロックの破損となり、オイルが噴出し火災となる」、と言うのである・・・

それを実証する実験の結果を発表した。

実験のやり方は、ストレーナーの吸引口を90%以上塞ぎ(1/16開口)、潤滑不足を作り出しての走行実験。オイルは適正の量が入っている。

暖機後に時速20キロで走行させたら、9分後にエンジン破損でオイルが噴出し、白煙を噴いたが火災には至らなかった、というもの。

白煙を噴いた原因は、コンロッドが折れたことによる、シリンダーブロックの破損で、オイルが噴出したことによる。

ここで「違うな~」となるのである

これまで、エンジンオイル無しでどの位走行できるのか、と言う実験を数多くやってきた者にとって、時速20キロでの走行では、数時間走行して、別のトラブルで停止、と言う状況しかない。

まして、国土交通省の実験では少量でもオイルは回っているし、エンジンの回転数は1000回転ぐらいだろうから、吸引されるオイルの量も少ないはず。或いは十分な潤滑量と言えなくもない。

コンロッドが折れると言うことになるには、かなりの回転と負荷が加わっていなければ起きない話であるし、折れる前にピストンが焼きついて停止する。

我々がやってきた実験では、エンジン内部の磨耗状況にもよるのだが、クランク周りであると、メタルが焼きつき、それを無理やり回せば、メタルが溶け出し、ベアリングキャップの破損で停止に至る。

または、カムシャフトが焼きついて停止。タイミングベルトを使っているエンジンでは、そのベルトが切れて停止。

その状態のエンジンを分解してみると、ピストンとシリンダーは僅かに引っかき傷があり、軽い焼き付を発生したことがわかる。

クランク周りのメタルについては、熱による溶け出しが僅かにある。

でもカムのジャーナル部分は、全てに焼き付き跡がある。

新品のエンジンでもなければ、簡単には焼きつかないし、コンロッドが折れることもない。さらにオイル交換をやらなかったエンジンでは、そのことによるオイルスラッジが多量にあり、それが潤滑の役目をするので、軽負荷では焼きつくまでに時間がかかるはず。冷却水まで抜いてあるのなら別だが。



2012年7月18日水曜日

その後のスバル1000スポーツはどうなった?

2010年10月24日にアップしたブログには、スバル1000スポーツに1300Gのエンジンを載せて、クラシックカーを楽しんでいる友人がいる、と言う記事を書いたが、その後、オリジナルのエンジンに戻した、と言うので訪ねてみた。
これが完全に再生された昭和43年スバル1000スポーツ。登録ナンバーは、当時と同じ番号を選んだ。もちろんクラシックカーイベントでは、フロントだけ当時のナンバーを貼り付けて、若き日への郷愁を誘う 

 すると、昔懐かしいと言うよりも、記憶がはっきりとしない状態の1000スポーツエンジンが確かに搭載されている。ソレックスのツインキャブでCVタイプ。インテークマニホールドこそ1000スポーツのものではないが(オリジナルは鉄製だが、アルミが付いていた)、それ以外は1000スポーツ。
楕円形のエアクリーナー。ツインキャブの証でもある。非常によく再生されたエンジンは、その部分だけ鮮やかだった 

 エンジン再生をその筋のプロにお願いしたと言うこともあり、シリンダーブロックやヘッドはサンドブラスト処理がなされ、新車時以上に(知らないが、おそらく)きれいな状態。

 エンジンを始動させると、1300Gを載せていたときとは違うサウンド。それは当然で、排気量ばかりではなく、エンジンそのものから発せられる独特の音と、アクセルを踏んだときのレスポンスの良さなど、普通のセダンとは明らかに違う感触。

 点火系はどうしたのか見れば、以前、私が手を加えたウルトラ(永井電子)のセミトランジスター点火に、同社のシリコンコードはそのまま使っていた。
エアクリーナーを外すと、ソレックスのツインキャブが現れる。点火装置は以前、私が手を入れた状態で使われていた。ウルトラのセミトランジスター点火システムとシリコンコードだから安心していられる 

 ディストリビューターなどはどうしたのか聞いてみると、それまで使っていた1300Gのものだという。

 これは正解、と言うよりも、それを使った方が安心。なぜかというと、このディスビも、私が作動不良を見つけ、修理していたものだからだ。バキュームアドバンサーやガバナ進角、ポイントカムなど、一通りメンテしたのである。

 ボディ塗装などには痛みも見えるが、再塗装せず、このままにして、歴史を語れる方がいい、と言う話をしているのだが、一方では、きれいに塗装しなおした方が見栄えがいいので・・・と言う方もいるようだ。でも私は賛成しかねる。

2012年7月13日金曜日

ホンダNC700X・ツーリング主体として開発されたバイクだが、どこかチグハグな感触がある

これまでとは100%違う設計思想により開発されたエンジンを搭載し、更にガソリンタンクがシート下に移され、これまでのガソリンタンク位置には、フルフェシスのヘルメットがすっぽりと入ってしまうBoxを装備する。こりゃ一度乗ってみる必要がある、との判断でホンダ広報より拝借して、数百キロ走ってみた。

確かに便利なニーグリップ部分のBox

 NC700Xと言う名称だから、エンジンの排気量は当然700cc。そして前傾並列2気筒。ここまではどこにでもありそうなエンジンだが、内容は大きく違う。ひとつはクランクの角度が270度であると言う点。ただし、このクランク角度のバイクは、既にヤマハが市販している。

 270度と言うクランクは何ぞや、と思うだろうが、燃焼間隔の違いに現れる。つまり360度であるなら等間隔燃焼だが、それ以外の角度は、不等間隔燃焼ということになる。180度クランクも、2気筒では不等間隔燃焼となるが、更に進んでそれを270度としたものもあるのだ。
高回転高出力というこれまでのホンダイズムから脱却し、実用性を重視したエンジンを作り上げた。確かに走る感覚は楽しく、鼓動にあふれている。270度と言うクランク角度は特別の意味合いがありそうだ 
 
 このようなエンジンを既に市販しているヤマハのサイトには「360度や180度クランクでは、左右のピストン位置において、どちらかが下死点なら隣のピストンは下死点か上死点。つまり、クランクに対して上下に動くものが、左右同時に停止する瞬間が出来る。これは運転するライダーとして、心地の良い振動を打ち消してしまう」とある。

そこで、常にどちらかのピストンを動かしておき、「躍動感を持たせて、運転する、アクセルを開ける楽しさを呼び起こすようにした」と言うようなことが書かれていた。ヤマハのモトGPマシンも同様な工夫がされているというのだから恐れ入る。

 ただしホンダはその270度クランクだけにとどまらず、左右シリンダーのバルブタイミングまで変えて、更に鼓動を強調するバランサーの装着までやって、小気味良い加速時の息遣いを強調している。
新しい思想により開発されたNC700X。フレーム構造を見るとまるでビッグスクーターの様である。ガソリンタンクはシートの下、その前にポッカリと開いたスペースはヘルメットも入るボックスが付く 

 そんなバイクだから、エンジンのフィーリングは、バイクの素晴らしさを理解できるライダーにとって、とても気持ちの良い状態であることは確かだ。
リヤフェンダーとタイヤのクリアランスが大きいのも最近のデザイン。もう少し詰めれば足付き性が向上すると思うのだが。全体のイメージからすると、やはりホイールの径が小さい。その影響は出ている 

 ギヤを入れ、アクセルをほとんど開かずとも、トルクを使える状態としたエンジンは、これまでのホンダ車とは一味もふた味も違う。ス~と動き出しグスグスという鼓動を尻の下から、背中から感じさせ、レスポンス良い挙動を見せる。

 それはまるでシャフトドライブのバイクを操るかのようで、駆動系に余分なバックラッシュを持たず、ギヤをシフトした瞬間から、すぐさま駆動が伝わり、加速状態となる。

走り出しからギヤチェンジの瞬間まで、全ての領域で鼓動が楽しめる

 グスグスと言う加速時の鼓動は、なんともたまらない魅力を持つものだが、「それを味わって欲しいと言う」、なんていったところで、その鼓動の魅力とは何かを知らない人物に、「味わえば分かる」と説明しても、万人が理解できるものではないのが残念なところ。
一番の特徴は、何と言っても普通ならガソリンタンク部分にあるボックス。フルフェイスのヘルメットが入ってしまう容量があるので、当然ツーリングで使う用品を収納するには十分。身軽に見える形でスマートにツーリングできる 

そして5速、6速となると、エンジンは2000回点以上回しておく必要に迫られる。それは、270度クランクと言う構造的なものなのか、1シリンダー350ccと言う排気量が影響するのかわからないが、とにかくギクシャクして走りにくい。

 ただし、高速道路を100km/hで走行(3000回転ほど)中でも、そこからアクセルを開ければ、小気味良いグスグス振動が尻から伝わり、なんとも言えない味わいを楽しめる。この状態が、かなりの速度まで続くのは、うれしい限りである。

 加速・減速時の上下動も、ギクシャクした感じはなく、常に動力が路面に伝わっているようで、全てにおいてダイレクトな感触を持つ。ただ、ツーリングを主体とするバイクとした場合、もう少し柔軟な感触が欲しくなる。つまりそれは優しさであり、優しければ疲労は少なくなるからだ。
排気量が700ccであっても、コンパクトにまとめられているため、フロントスタイルはスリム。もう少しカバー類があってもいいのではないかと思う 

 ところで排気量が700ccあって、シリンダーは前傾並列2気筒となれば、シートの高さは低いと言うか、足付き性がいいだろうと想像するが、これは違っていた。表現は悪いが、シートが広いために蟹股スタイルとなり、シートは低くてもバイクを支えるときの足の置き場に苦労する。身長180cm近いライダーが乗ってこの状況だから、小柄な方では大変だろう(後日、シート高を30mm下げたモデルが追加された)。
でっぷりとしたシート。スポンジのストロークは少ない。故に足つき性が十分ではない。足を着くときに邪魔となるシートの肩部分は、ライディング中に接触しないところだろうから、改良の余地はありそうだ 

 それでも救われるのは、極低速走行でのバランスの良さである。エンジンやクラッチが、左右に大きく出ていない分、偏りがないので意外なほど走りやすい。それは250ccのシングルより優れていた。

 速度を上げていくと、俗に言う「立ちが強くなる」ことはなく、ほとんどニュートラルの雰囲気があるが、それは、どうやらフロント周りからきているようだ。つまり、フロントのタイヤ径を小さくし、ヒラリ感を強くしたことが影響していると考える。

 ヒラリ感についてはいろいろな意見があるが、何処を走らせるのか、どの目的で走るのか、誰が(年齢も)乗るのかまで盛り込んで決めないと、一部での性能は突出しても、全体として理解できない性能(性格)が浮き出てくる。

 高速道路など直線での走行は問題ないが、峠ではその性格が露出する。それも素晴らしいとはいえない状況で、この性格は、どう見てもサーキット用、としか思えない。つまり、かなり構えてのライディングを要求される。

どのような場所を楽しく走らせるバイクなのか、目的がチグハグで分からなくなってしまった

 ツーリングスタイルとなれば、普通はリーンウイズ(バイクとライダーの傾きが同じ)で、周りの景色を見ながらコーナーを楽しむだろうが、このライディングスタイルであると、どうも不安感が強くなりリラックスできない。

 ではどのようなライディングスタイルならいいのかというと、それは、しっかりと構えてコーナーへ入るスタイル。尻を内側へ少し落とし、同時にひざを開き、腕は突っ張るように曲げて、低い姿勢から目的の方向を定める。俗に言う肩から入るスタイル。これはサーキットの走り方で、周りを楽しむ余裕など出ない。
 
極端の例で言うと、あるコーナーをツーリングスタイルで走行した場合、不安を感じる速度が80km/hだったとすると、構えて乗ることで100km/hでも不安がない。当然この速度では景色は楽しめない。「ナンダこれ」と思わず声に出してしまった。
ガソリンはリヤシートを開ければキャップがある。よく観察すると、ヘルメットホルダーもあるのだが、使いにくい。また、二人分必要だろう 

 また、フロントのタイヤ径が小さいということは、路面の小さな凹凸を吸収する能力がないため、一般道では常に小さな衝撃がハンドルとシートの前方に入る。これも疲労に結びつく。やはり優しさがツーリングバイクには求められる。辛くても速ければいい、と言うスポーツバイクとは違うのだから。

 そして、このセッティングだからだろうが、下りのコーナーをアクセルオフ状態で曲がると、ハンドルが切れ込んでくる。下りでもアクセルを開けていればその症状は出ない。どのようなときでもニュートラルステアがツーリングバイクでは当然と思うので、疑問を感じる。
エンジンは当然インジェクション。触媒も装備するが、2気筒という構造から来る鼓動を強調させるため、クランクはホンダ初となる270度を採用。更に左右シリンダーのバルブタイミングを変更し、発生する燃焼圧力差によるアンバランスをうまく利用。バランサーの構造で問題を解決しながら、気持ちのいい鼓動を引き出した 

 更に気がついたのは、フロントブレーキの使いにくさと言うか、効かせるレバーのフィーリングが十分ではない。確かに剛性感はしっかりとあるのだが、剛性があればそれでいいというわけではない。剛性感を出す前に十分な制動があればそれに越したことはないわけで、ソフトなレバータッチがあって、それでいて強力に制動する性能が求められる。

 これだけの重量があり、かつキビキビ動くバイクには、スッと握って、しっかりと制動がかからないと、止まる位置を行き過ぎてしまう。サーキットのようなところを走るのなら、ガツンというブレーキを掛けることが多いので、この性格でもいいのだろうが、一般道では千差万別、それに対応できるもの造りが欲しい。

 同様に、チェンジペダルの設計も、ペダルストロークを小さくし、その分フットレストに近いため、シフトアップでは爪先を突っ込むような角度にしなければならず、シフトがやりづらい。あと10mmほどフットレストから離れていれば問題ないのだが。試しにペダルの高さ調整をしてみたが、幾分良くなったものの解決しなかった。
コンパクトにまとめすぎたチェンジペダル。スポーツ走行用ならコンパクトでシフトストロークが少なくてもいいが、ツーリングや普段では、シフトのしやすさが重要。せめて後10mmほどフットレストと離れたところにペダルがあれば、納得できるのだが。高さ調整では解決しなかった 

 また、操縦性などには関係ないことだが、エンジン回転リミッターの効き方にも問題がある。回転計はバーグラフ式で6500回転からレッドゾーン。どのような感じなのか2速ギヤで引っ張ってみると、レッドゾーンに入ったとたん、いきなりエンジンがストール。リミッターというより、エンジンキルスイッチが作動したような感触で、強い減速感を伴うため、危険な挙動を生じる。もう少し穏やかなリミッターが欲しいところだ。
 
 最後になったが、気になる燃費の素晴らしさ。郊外の大きな渋滞がない条件でのことだが、何と平均燃費33km/Lと言う数字を記録した。高速道路を主に走行したら、これ以上の数字が出ることは確かだ。

2012年7月3日火曜日

イギリスの道路工事で交互通行指示は中間に立つおばさんが持つボード

 これは道路工事で片側交互通行に関すること。日本では、工事区間の前後に赤/白の旗や赤色の誘導灯を持った人が、一人ずついて、旗や誘導灯を振り回して、止まれだの、進めだのとよくわからないアクションで、クルマや人を誘導している。その振り方は決まりがないので、勘違いすることも多く、事故や喧嘩になることすらある。
 
で、イギリスはどうなっているか。かなり前経験したこと、それは、文字で表現する。つまり、裏と表にGO/STOPと書いた大きなボードを掲げているのである。100mぐらいの距離では一人のおばちゃんが、絶妙にクルマを裁いている。

 交通量が多いところでは、裏と表にGO/STOPの表示だけでは、切れ目のない通行状態であると役に立たないが、GO側に対してSTOPに変えられる構造を組み込めば、双方向ともSTOPを表示出来るので、トラブルにはならない。

そんなことより、文字を見てはっきりと誘導する人の意思がわかることが大切で、これがあると安心して通過出来る。日本でもこれはまねをして欲しいものである。

 クルマに乗っていると、何やら意味不明の情報はうれしくない。誤解を招くだけである。そういえば、北海道を走っていたときのこと、ブラインドコーナーの途中で「この先道路工事中・速度落として」というボードを持ったおじさんがいた。わかりやすい。安心して減速を開始する。

一般道でも速度の速い(スピード違反)北海道ならではのことなのだが、現場監督さんが偉いのだろう。これが、他の地方のように意味不明?の旗を振っていたら、たぶんほとんどの人は減速しない。そして、いきなり工事現場に出くわし、あわててブレーキ、追突寸前で止まる。ダレが悪いの?

 クルマと人を捌く場所でも、このような文字での誘導は必要になる。STOP/GOでは味気ないので「進んでください/止まってください」と書いたボードを提示すれば、気持ちよくそれに従えると思うのだが、誰か道路工事の現場でやってみて欲しい。イギリスでこの状態に出くわしたときには、何の違和感もなく、素直にそれに従えた。

2012年6月28日木曜日

スバルBRZ(トヨタ86)のブレーキについて一言言いたい

スバルBRZの素晴らしさは、2月末のツインリンクもてぎでの試乗会で分かったつもりでいたが、少し違っていた

公道試乗会では周りからのストレスが加わるので、それまでとは違う部分が頭を持ち上げてくる

ツインリンクもてぎの試乗会では、一般道での走行はなかったので(正式に発売していない時期)、サーキットでは感じない細かな操作性に疑問が出た。それはブレーキのフィーリング。簡単に言えば、ブレーキペダルを踏む感触。

レガシィなどは、疑問を持たせないブレーキペダルのタッチで、右足だろうが左足だろうが、細かの制動に対して文句を付ける余地など存在しない。なのにBRZは???

どのような状況なのかと言うと、ブレーキペダルを踏み始めた瞬間から、踏み心地が優しくないのである。

例えば、左足で足首だけの動きを使って、微妙にブレーキ操作をしようとしても、ペダルに渋さのようなものを感じて、ドライバーが期待した操作に結びつかない。

何故このように、レガシィと違うのか、実験担当がいたので話を聞いてみた。すると・・・

「そのようなブレーキペダルの感触は分かっていますし、それは目的を持って決めたことなのです」と言う返事が返ってきた。

何故レガシィのようなブレーキペダルフィーリングにしなかったのか、と言う問いには「スポーツカーという範疇に入るため、ガツンと踏んで、しっかりと制動がかかればいい、と判断し、あえてそのようなセッティングとしました。作ってみたらこのようになったと言うのではありません」。

でも、しかし、である。サーキット走行やマニュアルミッション仕様では、ブレーキ操作に対して、割とガツンと踏む操作となるため、この設定でもいいのだが、ATとなると、構えてのブレーキ操作が多く発生し、そのときに不愉快な感触を味わうことになるので、ここは是非、レガシィのような設定に変更して欲しいと言う意見を述べると。

それに対して「確かにAT仕様では、左足ブレーキの操作を含めて、穏やかにペダルを踏むことが多いので、レガシィのようなブレーキペダルの感触にして欲しい、と言う意見がある、として取り上げます」と言うことになった。

2012年6月12日火曜日

スバルBRZ(トヨタ・ハチロク)試乗記

スバルでの名称はBRZ、トヨタは86(ハチロク)という。OEMではない

久しぶりに楽しいクルマのドライビングを味わった。なんだか分からないが、忘れていたような感触に、クルマから離れた後も、興奮した状態ではなく、冷静に、そのドライビングフィールを他人に話したくてしょうがない、という気持ちが長く続いた。これまた不思議なことである。

開発をやったのはトヨタではなく、スバルなのだ

 トヨタが作る2リッター4気筒、水平対向エンジン搭載のスポーツカー、と言うのは正しくなくて、スバルとの共同開発なのだが、基本的に企画や出資がその大半を占め、トヨタでは開発をやっていない。つまり、スバル製といっても過言ではないのである。
 
少し前の話だが、そんなモデルのスバル・ブランドであるBRZの試乗会が、発売を先立った2月初旬ツインリンクもてぎの特別ショートコースで行われた。
スバルのBRZとトヨタの86では、エクステリアのデザインが少し違う。例えばヘッドライトは共通で、見た感じを変えるため、バンパーの作り方とデザインを変更し、ヘッドライトの寸法を小さく見せているのがBRZ

運転している最中から、正直、最近では味わったことのない、すばらしいと言う表現では言い尽くせない楽しさに、冷静さを失うこともなく、堪能してしまった。
 
いったい何がこれまでのクルマ、特にスポーツカーと違うのだろうか。その開発には、スバルならではの経験と考え方が、隅々まで詰まっているからに他ならないだろう。
全高が低いのでかなりスポーティに見える。だからと言ってサスペンションを締め上げているわけではない。締め上げなくてもロールは少ないからだ

「やるからには、トコトンやろう。開発資金のすべてをスバルが負担するのではできなくても、その資金のバックアップをトヨタがやってくれると言うことになれば、話は違うわけだから」、と言う話があったかどうかは知らないが、レガシィやインプレッサの部品を流用したのでは適わない性能も、すべてに近い部分を新開発するとなれば、左右シンメトリカルAWDの優れたコントロール性能を、新開発するFRスポーツカーにも生かすことは可能であるし、またそうでなければスバルが作ると言う意味がないはず。
フロントに駆動系を持たないスバルのミッション。エンジンの高さが少ないため全体としては小さく見える。それだけマスが集中していると言うことだ 

スバルとして重要なことは、たとえFRとなっても、駆動輪から入る情報を、フロントにも伝え、それはまるでAWDがごとくの操縦性を確保することにある。それができて初めてスバルが作るFRスポーツカーとなる。この点が他のメーカーと明らかにスタンスが違う。「2WDは所詮2WDなんだから、限界の操縦性に難があっても仕方がない」、なんていう状態は許されないし、また考えてもいないようだった。

 動力としてのエンジン開発では、リッター100馬力と、優れたトルクを得るため、直噴を採用するのだが、ポート噴射も燃費と排ガスを考えたときに有効なことである。
エンジンの取り付け位置を下げたので、プラグ交換が普通の方法ではできない。どうするのかと言うと、エンジンマウントを外し、エンジンを5cmほど吊り上げればいい。これはスバルのやり方。トヨタの開発陣は唖然としたそうだ 

ふたつあるインジェクターで、ポートから噴射するものはこれまでの技術で問題ないが、直噴の方はスバルにその技術がないのか、と言うとそんなことはない。ボクサーディーゼルを数年前に開発し、欧州ではすでに販売しているわけで、その技術(主に燃料ポンプとコモンレール)は確立している。

 では、直噴技術をトヨタからとしている理由は、「スバルだけの技術で開発したのでは、トヨタとしても面子がないだろうから」と表現する方もいる。

 ディーゼルの高圧噴射技術(コモンレールは最大1800~2000気圧)を持ってすれば、最大200気圧(BRZに搭載のエンジンでは)に対する技術は問題ない。どこのメーカーでも、ディーゼルの高圧噴射技術を使って、ガソリンの直噴技術が成り立っている、と表現をしているからだ。ちなみに、ポート側の噴射圧力は4気圧である。

やはり回したい、と言うわけで、2リッター4気筒エンジンのボア・ストロークはスクエアの86×86mmになった

 そのエンジンだが、リッター100馬力を目標に開発。それも比較的中速回転の7000rpmであるが、インプレッサに使用しているFBエンジンでは、ロングストロークとなっているため、目標に届かないことから、新設計で86×86mmのボア・ストロークを選んでいる。
クランクシャフトとコンロッド、それに繋がるピストンなど、今までのスバルボクサーの基本的設計から抜け出せたのは、ディーゼルの開発が関係している
ピストン頂面は直噴された燃料の流動性を計算した窪みがある。S/V的には損をするが、直噴のタイミングによっては、この窪みで燃料を受け止めなければならない場合もあるのだ

 もちろんトルクも充実しており、リッター10kg・mを超えるのだが、トルクカーブには大きな谷が存在する。3000回転が一つの山で、そこから4000回転に向かって低下し、次に5000回転に向かって上昇する。MTの場合、速度とギヤの位置によっては加速の反応が乏しくなるが、排気干渉を防ぐ4・2・1エキゾーストパイプとすると、そのトルクの谷は埋まっても、好ましくないキックバックがあると言う話だ。「ふたつの回転域が楽しめる、と考えてください」と言うのだ。確かに走行場所にあわせてギヤをシフトすれば済むことなので、そのようなときには、臨機応変に対処するよりしかたがないのか。

 それより、楽しいトルク性能も見逃せない。それは、5000~6800回転までがフラットに最大トルクを発生すること。普通のガソリンエンジンでは、なかなかこのようなトルク特性を引き出すことはできない訳で、この回転領域を楽しめるスポーツ走行では、実力を如何なく発揮できる。
 
ツインリンクもてぎの1コーナーに突っ込んで、ステアリングを切り始めたときから、気持ちに変化が

最初に試乗したのはATモデル。トルコンの6ATでマニュアルシフト付きだが、シフトモードをスポーツにして、VDC(ヴィークル・ダイナミック・コントロール)をスポーツにしておけば、これは楽しい、暴れることなく操作できてしまう。

横Gと格闘しながらアクセルを踏み、ブレーキをチョイチョイと触る。更にアクセルを深く踏んで速度を上げていくと、その横Gが抜けていく。BRZが軽いスライドを開始したのだ。180度ターンするコーナーの半分ほどの距離だが、それは実に楽しく、またやさしい挙動。これこそBRZが狙った性能なのだ。

アクセルを踏みつつ、左足でのブレーキ操作により、アンダーステアやオーバーステアを調整しながら、気持ちよく周回する。もちろんVDCをスポーツとしていても、大きく挙動を乱すような状態になりそうなときには、介入してくるらしいのだが、それは自然に近い制御でほとんど感じない。
リヤサスペンションも当然新開発。ここの動きをフロントに伝えると言う重要な目標を担う。使用するデフケースはマークXのもの。もちろんLSDとしてのトルセンデフが装備される 

このように操作してやると、若干アンダーステア気味になりながらも狙ったラインから外れることはなく、僅かにリヤを流しながら、連続したスキール音とともに駆け抜ける。大きくリヤを流そうとしたが、それにはかなりの速度でコーナーに突っ込み、無理やりスライドさせるしかなさそうだ。しかし、この状態の走り方は決して楽しくない。やはり、しっかりとトラクションを確保しながらの走行がBRZ本来の楽しみだろう。
メーター周りは意外にあっさりとしている。左にアナログの速度計、中央はアナログのエンジン回転計とその中にデジタルの速度計がある。回転数と速度を同時に見られるのはうれしい 

もちろんATにはブレーキオーバーライドが装備されている。左足でのブレーキ操作が何に役立つかと言うと、暴走事故が絶滅するのは当然だが、そればかりではなく、アクセルペダルの踏み方ひとつで、この制御がキャンセルすれば、挙動の安定性確保や、アンダーステア、オーバーステアの状態から、回復させることだって可能となる。

そのためには、ドライバーの意思が伝えられる制御を必要とし、開発者は、ブレーキオーバーライドが作動しても、アクセルペダルを小さく2~3回踏みつけることで、アクセルの操作が復活してくる制御を組み込んだ。これが重要なこと、特にBRZのようなスポーツセダンでは必要になる。

こればかりではなく、コース上にあるパイロンで作られたシケインに突っ込んだとき、エンジンとミッションはすばらしい働きをした。それは、ブレーキングからステアリングを切り始めた瞬間に起きた。何とエンジンはブリッピングし、ギヤは次の加速にあわせ自動的に二段ダウンシフトした。それはまるでドライバーの意思を受け継いでいるかのような制御であり、ATをスポーツモードとしておけば、パドルによるマニュアルシフトなどの必要性すら感じない。
新開発の6速マニュアルミッション。シンクロの作動を早くするなどし、ダイレクトシフトながら、硬さのないレバータッチはすばやいシフトを可能とし、シフトすることの楽しさも味わえる
ATのシフトレバーは特別な形ではないが、ゲート式をブーツでカバーしているため一瞬まごつくこともある。スタビリティコントロールのスイッチとATモード切替スイッチはレバーの手前で扱いしやすい

この制御は、横Gセンサーからの信号を元に、エンジン回転や速度、何速に入っているか、そして減速Gなどから、ステアリングの操作を始めることで、必要なギヤを選び出し、そこへダウンシフトすると言う。

実にすばらしい走りである。エンジンやミッションがというより、ボディやサスペンションが勝っていると言うことなのだろう。

触媒の熱害対策で必要なアンダーカバーはアルミとして、ついでに補強のブレースに使う

AWDと同じ安定性を得るためには、エンジン搭載の位置を、当然フロントミッドシップとも言える状態にしなければならないが、それは簡単な話ではない。更にエンジンの搭載高さも下げなければ、重心を目的としたところに収められないのだ。しかも、エキゾーストパイプの配置と言う障害もある。

そこへトライするにはプラットフォームから何からすべて新しく開発する。そして得られた数字は、エンジンがインプレッサなどと比較して240mm後方へ、エンジン高さは60mm下げること。もちろんエキゾーストパイプの形状やインテークパイプの形状も低くしているのだが、その結果、触媒の熱害試験(あえて失火させ、触媒を反応熱で高温とさせることでの被害試験)で問題となり(触媒がシリンダーの下に来るためどうしても地上高が小さくなる)アルミ製のアンダーカバーが必要となったのだが、どうせなら補強のブレースとしての役目も担おうということで、しっかりとボルトで固定されている。
エンジン下を覆うアルミのカバー。触媒対策だが、ついでに補強板としての使命も持たせている 

このようなことから重心が非常に低い。そして、コーナリング性能は当然として高くなるが、それよりもいいのは、ロールを抑えるための硬いスプリングやスタビライザーを必要としないこと。更にタイヤの性能をしっかりと使い切れるため、ハイグリップタイヤを履かなくても十分な性能を引き出せるのだ。

そのタイヤだが、ブランドはミシュラン。しかし、何とプリウスと同じエコタイヤが装備されていた。エコタイヤはどうしてもウエット性能やブレーキ性能が劣るので、ここにハイグリップタイヤを装着したら、もっとすばらしい走りが約束できる。
タイヤはミシュランが標準装備。ただし使用するのはプリウスと同じエコタイヤ。それでも十分な性能を発揮できる。ハイグリップを装着したら、いったいどうなるのだろうか

2012年5月31日木曜日

バッテリーの性能が低下すると燃費が悪くなる?!

バッテリーを新品にしたら燃費が良くなったということは、裏を返せば性能低下したバッテリーを使い続けると、燃費が悪くなる、と言うことになるわけだ。

実は、面白い体験をした。これまで気にもせず、気にしようとも思わなかった状況に出くわしたのだ。それは、バッテリーを新品に交換した直後の高速道路で発覚した。

せがれから譲り受けた先代のホンダフィット。そのときから高速走行での平均燃費は一度も20kmを超えたことはなかった。19.8kmが最高で、それも100km/hキープを心がけての話だ。

最近では高速道路でも平均燃費は18.5kmと言う数字が普通だから、エンジン性能が落ちてきたのかな~と思っており、ケミカル処理など何かの対策が必要かもしれない、と言う判断をしていた。

ところがである、バッテリーの性能が低下してきており、セルを回す瞬間に、一瞬遅れることが1年ほど前から頻発するようになった。何時まで持つのか少し気になりだしたのだが、近いうちに車検もあるので、この際だからと、6年使ったバッテリーを新品にした。

その状態での高速道路で目を疑う平均燃費を表示した。特別飛ばすわけでもなく、またマイペースということでもない。100km/hプラスで走るクルマを見つけ、ペースメーカーとしながら走るやり方。

何と、いとも簡単に20kmを越えて21km近くまで上昇(写真では20.4kmであるが)。高速ばかりではなく、帰りは一般道走行が70%ほどで、更に標高1500mと言う峠などの山坂を走行してきても、自宅に戻ったときでさえ20.3kmの平均燃費だったのだ。
20.4kmと言う平均燃費はその後更に上昇して21km近くまでになった。正直びっくりである。その要因は直ぐに判断できた、出かける数日前にバッテリーを新しくした。それ以外何もしていない。だったらそれだ 

何故このような現象が生まれたのか考えてみると、それは、オルタネーター(発電機)に対する負荷が少なくなった結果であると考察できる。

バッテリーの性能が低下すれば、充電量を常に確保するため発電量が増える。つまりオルタネーターの負荷が持続する。そして燃費が悪くなる。

ただし、最近のクルマでは電流センサーと言うものを取り付けて、どれだけ電気を使用したかを測り、その使用した分をバッテリーに充電する、と言う制御が加えられているので、同じような状態とはならないかもしれない。

実際に、使用していたバッテリーと新しく購入したバッテリーで、どの位オルタネーターの負荷が違うか、電流計などを装備して確かめたかったのだが、使っていたバッテリーは既に処分してしまった後だったので、残念。
新しくしたバッテリーがオルタネーターの負荷を減らし(というよりも正しくし)、その結果が燃費を本来の状態まで戻した、と言うのが正しいだろう

そういえば、バイクのバッテリーも新しくして、マフラーを抜けのいいものに交換。燃費が悪くなるはずだったが、走行条件が良くなかったのに燃費はこれまで以上ということがあった

2012年5月19日土曜日

熱海のトラック事故・原因を考える

熱海のトラック事故はブレーキが効かなくなったことからの暴走と言うのだが、その原因追求が少し不足していると感じたので、私なりの見解を述べてみたい。

まず最初にやることは、ドライバーからの聞き取りだが、ブレーキペダルを踏む感触がどのように変化したのか、或いは変化しなかったのか。それによって原因は違うからだ。

ブレーキペダルを踏む感触が普段と変わらないのに、ブレーキが効かなくなったとすると、これはブレーキの使いすぎによるフェードと言う現象で、ブレーキパッドやブレーキライニングの表面が高温となって燃え出し、炭化することで(カーボンだから摩擦が小さい)ブレーキが効かなくなる。

中型トラックではフロントにディスクブレーキを装着していると思うが、ブレーキの冷却性に優れていても、ブレーキパッドのフェードは別の話。

もし、ブレーキペダルを踏む感触がフワフワで、しっかりとした状態でないとしたら、これもブレーキの使いすぎによる、ベーパーロックと呼ばれる現象。ブレーキは使うことで、そのエネルギーは熱となるわけで、使いすぎれば放熱が間に合わなくなり、ブレーキ液が沸騰する。

沸騰した泡がブレーキペダルからの力をダイレクトに伝えることが出来なくなり、俗に言うスポンジー状態で、ブレーキは効かない。

ブレーキ液の沸点が下がる原因は、長期に渡る使用により水分を吸着することによって起きる。そして、ブレーキ液が沸騰した形跡は、冷えることで泡が消えるため、そのままでは検証できない。使用していたブレーキ液の沸点テストをすれば判断材料となるが、断定は難しい。

ディスクブレーキをフロントに装着していれば、それなりに熱に対して強くなるが、それも確実に整備されていての話だ。

ブレーキペダルを深く踏めば何とか制動するが、普段のようなブレーキではないとすると、これはブレーキ系統のブレーキ液を送るパイプやホースに亀裂や緩みが生じて、ブレーキ液が漏れているためだ。

クルマのブレーキは、基本的に2系統であることが義務付けられており、FF車ではX配管で、例えば左前輪のブレーキパイプが破損してしまった場合、右前輪と左後輪にブレーキが作用する。トラックやFR車では前後で2系統となっている。

もちろんこの状態となると、何とか止まれる性能を残すだけで、連続した下り坂を、気にせずにブレーキペダルを踏めば、当然ブレーキは効かなくなる。

ただし、ここでの問題は、どのようにしてブレーキ液が漏れたのかと言うこと。接触事故でも起こさなければ(ブレーキ周りを岩などにぶつけるような)、配管が破損することはない。

だとすると、車検や直前の整備はどうだったのか。メカニックのヒューマンエラーはなかったのか。更にブレーキ液の交換は正しく行われていたかどうかも検証する必要がある。

ブレーキ液を交換しないで使い続けると、耐温度性能が低下し、沸点が下がりベーパーロックに繋がるからだ。かなり前の話だが、バスのブレーキが効かなくなった原因は、ブレーキ液の定期的な交換を怠ったためである、という。

また、このトラックはディーゼル車だろうから、そうなるとブレーキの助勢装置として作動させるブレーキブースターは、ガソリン車(全てではない)のように吸気管に発生する負圧を利用することが出来ないので、別にバキュームポンプを装備していたはず。

このバキュームポンプは正常だったのだろうか。

もし、ブレーキペダルを踏む感触が、まるで石を踏みつけているように硬く、ほとんど踏み込めていないとすると、バキュームポンプの不良が考えられる。

このバキュームポンプがどこに装備されていたか知らないが、小型トラックなどではオルタネーター(発電機)の後部、或いは前部。つまりオルタネーターにビルトインされている。

そのオルタネーターは、ベルトで回されるので、そのベルトが切れれば、負圧が作れず、ブレーキペダルを力いっぱい踏んでもブレーキは効かなくなる。

ガソリン車でも試しに、エンジンを停止させた状態で、ブレーキペダルを数回踏んでみると分かる。踏むたびに踏み込める量が減少し、ついにはペダルがほとんど動かなくなる。つまり、この状態ではブレーキは効いていないのだ。